2021/06/14 23:04
ザクセン州はドイツの東側に位置し、ドレスデンやライプツィヒなどの都市を中心とした州です。
東側にポーランド、南側にチェコとの境界を含む旧東ドイツの地域で、西側はテューリンゲン州、北側にブランデンブルク州とザクセンアンハルト州に接しています。
南側に位置するエルツ山地(Erzgebirgskreis)からは錫、鉛、石灰が産出します。そしてフローライトもエルツ山地の各地に産地があるので、ガレナ(方鉛鉱)やチャルコパイライト(黄銅鉱)など金属系の共生鉱物も見られます。
銀を採掘するために掘られ、今は廃鉱山になった鉱山が沢山あるエリアなので、フローライトの色にもそういった金属の影響があるのではないかと思われます。
●ベルグマニッシュ・グリュック鉱山
Bergmännisch Glück Mine, Frohnau, Annaberg-Buchholz, Erzgebirgskreis, Saxony, Germany
4、5年ほど前だろうか。インターネットで見てドイツのレインボーフローライトに惚れ込み、探し回っていくつか仕入れた。
光を透過させないで見ると、いくつもの色が重なり暗い茶緑色に見えるが、光を透過させた途端に黄色から明るい緑、澄んだ青に紫、最後に赤まで感じさせる色のレイヤーが飛び込んできて溜息ものであったが、希少なためお値段も溜息ものである。結晶は細かい階段状になっていて、透明感がほんのりあった。
このフローライトはドイツのザクセン地方、ベルグマニッシュ・グリュック鉱山のもので、わたしはザクセン州のフローライトにはあまり出会いがなかったので、この時初めて見たのだけれど、この鉱山からは他にも黄色のフローライトの中に深い青のゾーニングが入ったものもある。
ベルグマニッシュ・グリュック鉱山はエルツ山地のフローナウにある。
● ゼーンタウゼント・リッター鉱山
10000 Ritter Mine, Frohnau, Annaberg-Buchholz, Erzgebirgskreis, Saxony, Germany
最近フローナウ付近の別の鉱山、ゼーンタウゼント・リッター鉱山のフローライトとの出会いがあり、たくさん仕入れることができた。
ゼーンタウゼント・リッターは日本語では一万騎士の意味がある。なんとなく意味深。
こちらのフローライトはレインボーではなく、蜂蜜黄色にゾーニングが入ったものが多い。綺麗なものだと紫と青が何層にもなった細いゾーニングがあり、光を透かすと蜂蜜黄色はレモン色になり、非常に清々しい。
更にブラックフローライトと呼ばれる、光を透かしても透過出来ない程濃い紫のフローライトもある。
どちらかというとブラックフローライトの方がゾーニングの綺麗な黄色のフローライトよりも有名なようだが、どちらもとても可愛い。
●ヴァイサー・ヒルシュ鉱山
Weißer Hirsch Mine, Neustädtel, Schneeberg, Erzgebirgskreis, Saxony, Germany
こちらもエルツ山地にあり、白い鹿という名前のこの鉱山は有名な古い鉱山だそうで、今は観光鉱山である。
前述のゼーンタウゼント・リッター鉱山でも採掘される銀を目当てに開かれた鉱山で、銀の他に、ニッケルやビスマスやコバルト、更にはウラニウムまで産出したことが有名になった理由なのかと推測される。
観光鉱山と言っても採掘が出来るわけではなく、標本も多くはないらしい。1168年から800年に渡った採掘の歴史が見られる、鉱山内部に入ることのできるツアーもあるらしい。
●シェーンブルン(ボーゼンブルン)ウィーンのシェーンブルン宮殿との混同を避けるため()内を表記しています。
Schönbrunn, Bösenbrunn, Vogtlandkreis, Saxony, Germany
ザクセン州の南の端にあるシェーンブルン(ボーゼンブルン)という谷間の村のフローライトも仕入れた。透明感はあまりないが、ホワイトフローライトである。以前にも薄い水色のフローライトを仕入れたことがあった。こちらもあまり透明感はなく、この産地のものには多い雰囲気なのかもしれない。ここも鉱山跡が史跡化されていて、採掘は現在は出来ないのでフローライトはレアなんだとか。
●ゲルべ・ビルケ鉱山
Gelbe Birke Mine, Beierfeld, Grünhain-Beierfeld, Erzgebirgskreis, Saxony, Germany
フローナウから西に15〜20キロくらいの位置にあるスカルン鉱床の鉱山。
たくさんの種類の鉱物が採れるが、
銀を採掘するために18世紀初頭に開かれた。
フローライトは明るい緑の八面体結晶に薄っすら紫のレイヤーで産出するものが特徴的。
ゲルべ・ビルケとは、黄色の樺の木の意味がある。